前回の続きです。
便潜血陽性になっても精密検査を受けないでいることには
どんな不利益があるのでしょうか?
便潜血が陽性になっても、精密検査を受けずに後ほど大腸がんと診断されたグループは
精密検査を受けて大腸がんと診断されたグループに比べると
大腸がん死亡の危険性が4倍近くあったという報告1)があります。
同じ便潜血陽性+大腸がんでも、精密検査を受けたか受けないか、の違いで
のちのち大きな差が生まれるのですね。
実は、我が国の大腸がん検診では
便潜血陽性者の精検受診率の低さが問題となっています。
昨年の市町村実施の大腸がん検診の受診状況2)を一例としてご紹介しますと
令和3年度における大腸がん検診受診者は、3,536,875人。
そのうち便潜血が陽性となり要精密検査となったのは192,536人です。
この要精密検査と判断された人達のうち
実際に精密検査を受けたとわかっている人の割合は69.9%と報告されています。
本来であれば、100%であって欲しい数値が約70%というわけです。
それだけ、大腸内視鏡検査に対する物理的・心理的ハードルが高い!
ということなのだと思います。
なるべく苦痛のない内視鏡検査を行えるよう、私たち医療者も頑張らないといけませんね。
便潜血陽性になったら放置せずにもうひと頑張り、大腸内視鏡検査を必ず受けて下さい!
1)松田一夫, 渡辺国重:大腸がん検診における精検未受診がもたらす不利益―精検の重要性―.
日消集検診誌41:162-169, 2003
2)厚生労働省:令和4年度地域保健・健康増進事業報告の概要